道具帳という名の設計図

道具帳という名の設計図

歌舞伎の舞台背景の製作現場を見学させてもらったとき、

まず不思議だったのは、ひとつの大きな絵を数人で同時に描いているということでした。

なぜ違う人が同時に描いて同じタッチ、同じ風合いの一枚の絵を完成させられるのだろうか?

伺ってみると、1/50のスケールで描かれた道具帳なるものを見本として

その色、タッチ、風合い、サイズを全員が同じ認識を持って描いていくから

ひとつの絵が同じ仕様で完成するということだった。

 

1/50というとても小さなスケールなので、

最初に見た時はグラフィックで描いて、縮尺を変えているんだろうなと

思っていたが実物を凝視して驚いた。

1mmにも満たないような線、数ミリレベルのぼかしやグラデーションは

すべて手作業によって描かれていました。

 

これを見て職人さんたちはサイズや色だけでなく、

「あ、ここはこのタッチね」とか

「ここはこれくらいのぼかしね」とかを意識共有して

一枚の絵を完成させるのだという。

 

聞いても聞いてもなかなか理解し難い職人の世界だが

聞けば聞くほど、それでそれで!?と引き込まれる世界でもある。

 

道具帳と舞台背景画

 

 

 

歌舞伎の道具帳

道具帳とは、舞台を真正面から見たときの図で、1/50の縮尺で絵師が場面ごとに1枚ずつ筆などで描いていきます。 細部の寸法やディティール、色までも劇場の舞台や照明に合うように計算されています。この絵を元に舞台美術製作の絵描きが数人がかりで同時に描いて大きな舞台背景が完成します。 (製作:金井大道具)

 

 

 

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