ABOUT CHIKIRI PROJECT

ちきりプロジェクトは、つなぎ、伝えるためのプロジェクトです。人や企業、商品や素材、技術や経験、歴史や伝統。ものづくりはそれらの関係性から生まれてきます。そして、その組み合わせが少し変わることで、全く新たな景色が広がります。ものづくりの現場で私たちが覚えた感動を、アイデアと誠実さと少しのユーモアをもってお伝えしていきます。

 

 


「金井大道具」

創業130年。明治時代から現在に至るまで、常に業界の先端を走り続けてきた舞台美術製作会社が金井大道具です。同社は歌舞伎や舞踊といった伝統芸能の舞台美術をはじめとして、国内で行われる大規模イベントの舞台設営や、テレビのセット製作など、多くの美術製作の現場に携わっています。木工職人、絵師、セットデザイナーなど、幅広いものづくり専門家が集まる、まさに「職人集団」です。

CHIKIRI PROJECTのメンバーがイベントの美術製作の仕事で金井大道具とご一緒する中で、職人の技術、美術製作への想い、それらを繋いできた歴史の深さを知りました。しかし、美術製作はいわゆる「裏方」の仕事。多くの人に届くように、この金井大道具の魅力を広く伝えていきたい。そんな考えからプロジェクトが立ち上がっていきました。

 

プロジェクトをスタートさせるにあたって、まず、金井大道具の仕事場を見学させてもらいました。どの職人も淡々と作業をしているのですが、どの工程も丁寧で早く、静かに進んでいくことが印象的でした。木材を運び、位置を決めて釘を打つ。筆を選び、紙の上を走らせる。プロとしては当たり前のことなのかもしれませんが、基本的な所作の一つ一つに洗練と熟練が宿っていることに、感銘を受けました。

 

 

取材を進める中で、職人に多くの話を聞かせて頂きました。歌舞伎舞台製作では、舞台装置の解体・保存を前提に素材選びから設計までが行われていることや、背景画にこめられた意味合いなど。そして、特に印象的だったのが、伝統芸能の「色」でした。今回のプロダクトは、この「色」を伝えるためのものといっても過言ではありません。

 

 

 


「色」というテーマが決まったところで、今度はそれをどう伝えるか。写真や言葉でなく、できるだけその技術を「そのまま」の形で届けたい。ならば、金井大道具の持つ技術やナレッジを活かしてプロダクトを製作することが最適なのではないか。また、これまで舞台といった非日常空間の中で用いられてきた技術だからこそ、人々の生活の中に馴染み、長く使えるものをつくりたいと考えました。

 

 

 

長く使える、と一口に言っても、一般的に「ものの耐用年数を伸ばす」というのはあくまで機能の話です。しかし、機能だけで人はものを選びませんし、機能だけで選んだものに愛着は生まれません。「一生もの」と意気込んで買ったプロダクトを数年で手放してしまった経験は誰しもあるのではないでしょうか。

一方、自分の手でつくったもの、思い入れのあるものは、値段や機能にかかわらず手放すことなく手元に残るはずです。機能が備わっているかだけでなく、そこに思い入れが込められるかどうか。それは今回のプロダクト開発における重要なテーマとなりました。自分の気持ちをのせる余白があることが「長く使われるプロダクト」を生むために必要な要素なのではないかと思います。

 

 

今回金井大道具と開発したプロダクトは好きに作り、好きに使い、好きに飾ることができるもの。そうした余白がたっぷりと残されています。あなたの生活を彩り、長く楽しめるプロダクトに育っていくことを願っています。